保健室の読み物

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資料要約、学校保健各種まとめ

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学校の災害対策マニュアルと、保健室の災害用備蓄品を見直す  

 

災害対策としては、最悪のケースを想定すべきだろうし、マニュアル通りにはいかないと心得るべきだろう。

 

そもそも災害対策マニュアルなるものを学校で決めたとて、結局はその通りにいかない場合もある。役所の指示も変わるし、被災状況、環境、発生日時、資源、立地、個人、各家庭でも違う、それを細かくフローチャートでマニュアル化しようとすると、肝心な要点が抜け落ち、余計情報が錯綜・混乱する事態になる。(※学校防災マニュアル作成の手引きには実情に応じて話し合って見直そうと書いてある、が、大川小の例を思うと、各学校で考えてね、より、自治体の災害担当が学校へ災害時のマニュアル指定してくれればいいんじゃねと思う。ちゃんと専門家に任せて作ってもらった方がいいし、学校の先生は指示に従うの上手だし。逆に役所の指示を待つのか、自分たちで判断しなきゃいけないのか迷ったりする方がやばくねって思う。※補足をすると、防災教育の完成形は釜石の奇跡と言える。日頃から地域全体で防災教育を行い、小学生でも避難3原則を率先して行うのが当たり前という共通認識を養う、これが正解だと思うから自治教育委員会ファイト。できない理由なんていくらでもあるから関係者の方を悪く言いたいわけじゃないよ。やらない理由はないと思うけどね。)

 

中井久夫先生だって言ってる。起きてしまったら結局はマニュアルに従うよりも現場にいる者たちで最善最良の判断をするのが有効なのだ。

有効なことをなしえたものは、すべて、自分でその時点で最良と思う行動を自己の責任において行ったものであった。指示を待った者は何ごともなしえなかった。統制、調整、一元化を要求した者は現場の足をしばしば引っ張った

中井久夫 災害がほんとうに襲った時 

 

 

こんな気の持ちようなのだが、最善最良の選択をするためには様々な状況で何が起き、何ができたか、その経過を学ぶ必要がある。

(※災害を舐めているつもりは毛頭ない。私自身某震災を経験し、家は一部損壊、箪笥の下敷きになり、断水のため自衛隊の給水所から水を朝昼晩運んで、風呂場も壊れて自衛隊風呂に数か月通った経験もある。学校では炊き出しのボランティアや向かい合って倒れまくった下駄箱と図書室の整理もやった。ただ、自然災害は食い止めようがないのと、日常に復旧するよう考えるだけでいいと思うのだ。(妥協は必要。家が全壊した友人も避難所から学校に通っていた。どっちが可哀想とか不幸自慢とか、いつまでも過ぎたことを省みてもしょうがないと思うだけだ。))

災害時の保健室対応について書かれている書籍をいくつか要約、具体的に必要な学校の災害対策マニュアルと、保健室の災害用備蓄品について簡単な結論をつけたいと思う。

 

 

 

 

結論

 

先に結論をまとめるとこうなる。

前提として、マニュアルに縛られず、現場で臨機応変に対応することが最善であると認識しておく。そして、災害対策マニュアルは自治体で考案してくれず各学校で作成するものとする。

 

災害対策

①保健に限らず、学校保管系で重要な資料はクラウド管理に移行する。泥水被って使えなくなるのは復旧が遅れるだけ。ローカルサーバーかgoogle workspace、microsoftでもなんでも。

自治体のハザードマップ・災害担当と想定されうる初期災害・二次災害を把握、地域避難施設状況をしておく。適切な施設利用・外部資源の案内ができるようにする。

③まずは自助、それから共助を具体的に防災教育で行う。(※日本人のまずは指示を待とうとか周りを見て動こうというマインドを払拭、教職員・生徒で共通認識にする。)

④災害前~災害発生時~事後の流れ、役割分担を全教職員・生徒・保護者で理解しておく。日頃の避難訓練も何分かかりましたとかじゃなくて、こうした災害・二次災害が想定されているので、この場合は~という風に確認する。点呼、保護者への引き渡しは入念に確認する。

twitter、classroom、メール、チャット、災害用伝言サービスなど、連絡手段・安否確認の流れを生徒保護者と確認しておく。

⑥災害備蓄品はこんな感じで備えておく。異論は認める。防災リュックと防災備蓄品バッグ(大)で用意しておき、戻れる時は防災リュックだけ持っていく。戻れない時はとりあえず全部持ってく。教職員には備蓄品がここにある事を周知しておく。

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書きそびれたけどティッシュと合わせてトイレットペーパーもいいですね。マッチもライターでもいいです。

基本電気は震災系は停電するのでライトや発電付き小型ラジオ・充電器はあった方がいいです。水や食料は比較的すぐ手に入るので大丈夫でしょう(経験談)。

薬入れるようの大きい鞄、毛布などを入れる衣装ケース、以下のような災害リュックなどで用意してみるといいのではと思います。

 

⑦避難所での応急処置を想定しておく(※~72時間は外科系(多発外傷、熱傷、打撲、骨折、切創)、それ以降は、心的要因(PTSD、不安、不眠、過労、便秘、食欲不振、腹痛、感冒)、感染症生活習慣病が考えられる。)

⑧多分まだあるんだろうけど、ひとまずこんな感じ。

 

 

 

災害時の保健室対応に関連する書籍

 

取り扱う書籍はこちら ↓

 

①学校防災マニュアル作成の手引き(文部科学省

https://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/anzen/__icsFiles/afieldfile/2018/12/04/1323513_01.pdf

②学校危機管理マニュアル(東京都)

https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/school/document/safety/crisis_management_manual.html

養護教諭のための災害対策・支援ハンドブック

 

④保健室は震災救護センター

 

養護教諭が語る東日本大震災

 

東日本大震災直後の保健室

 

主に、④保健室は震災救護センターは新潟県中越中越沖地震、⑤養護教諭が語る東日本大震災・⑥東日本大震災直後の保健室はその題名通り、東日本大震災の記録となる。

 

中でも、養護教諭が語る東日本大震災は、各地域別地震発生からの経過が事細やかに綴られており、もっと自分にできる事があったのではと葛藤する先生の姿や、生徒の明るいブラックジョークは悲痛な思いが伝わるものであった。(泣ける)

 

 

①学校防災マニュアル作成の手引き(文部科学省

 

https://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/anzen/__icsFiles/afieldfile/2018/12/04/1323513_01.pdf

 

これはマニュアルを作ろうというもの。とても丁寧で優しい内容。(丁寧すぎてまじめにやったら死ぬレベル)

 

マジで雑な要約

 

マニュアル作成の手順は、①災害発生前(体制整備、備蓄、点検、避難訓練(防災教育)、教員研修)②災害発生時(初期対応・二次対応・安否確認、対策本部設置、引き渡しと待機)、事後(避難所協力、心のケア、原子力災害等)に分けて行う。自治体の暴対担当と協力して作成、見直しを行う。

具体的には各学校防災組織を作り、担当を決める、各自治体のハザードマップや防災担当と協力して必要な体制整備、災害発生時の対応、避難所協力の内容を決める。

※あるあるなのが防災担当が管理職にのみ報告し、組織として機能しなかったり、教職員に研修等指示をしない事。全教職員が災害発生時の対応(授業継続可能or停電断水により不可能、生徒保護者との安否確認方法)、備蓄の場所と待機・避難所とした場合の教室の選定、役割分担ぐらいは把握すべき。それができないならマニュアルなんてほんと無意味。

 

備えておくと役立つ備品はこちら(抜粋)

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東日本大震災の教訓もあり、1階は浸水したものとする、災害発生後、備蓄などは取りに戻れないと考える、保健室含み学校関係の資料のクラウド化が求められる。連絡は込み合うのでメールなど別の連絡手段を用意しておく。他、避難所での救助活動や心のケアなど(これは⑤東日本の方がとても詳しいので割愛。)

 

②学校危機管理マニュアル(東京都)

 

https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/school/document/safety/crisis_management_manual.html

 

たまたま東京都でやってみる。各地域毎にあるよ。

 

マジで雑な要約

災害発生したら都本部を置く。

災害発生後は管理職・危機管理担当は参集(震度6弱以上は全教職を自動参集)、生徒保護者・教職員・学校被害安否の確認をして本部に報告する。

 

twitter東日本大震災の時に災害地域の情報、必要物資の情報拡散に有効だった。※悪意のある情報の拡散もあるが、安否確認・情報発信に学校twitterを使うのは全然あり。

コラム 震災時におけるTwitterの活用状況について : 平成23年版 情報通信白書

 

で、学校は、学校危機管理委員会・危機管理部・連絡班・施設班・食料班・救護班・避難所支援班・経営企画室に役割分担されるので、人員が足りるか全然分かんないけど、それぞれの役割をこなす。あとはよくある復旧学校再開までの流れ。東京都は働かされますね。人員足りるか知らんけど頑張りましょう。

 

 

 

養護教諭のための災害対策・支援ハンドブック

 

 

学校全体の災害対応マニュアルだとすっ飛ばされそうな内容が養護教諭の視点で丁寧にまとめられています。養護教諭ができる事を様々な角度から入念に考えされた結果のように感じました。静岡県養護教諭研究会の先生方へは尊敬の念しかありません。

 

要約

発生前から発生後6か月までの主に養護教諭の職務まとめ。

 

発生前

避難訓練・防災教育、心の健康・応急手当等の保健指導の実施・計画

②校区の被害想定(被害想定を踏まえた管理アニュアル、避難でパニックになりやすい生徒の把握、安全点検)

③災害発生時の対応について事前に資料配布

④要管理児童の薬の保管、保護者不在時の対応を確認

⑤災害備蓄(救急薬品、衛生材料、関係機関・災害拠点病院の確認)

⑥災害後の心のケアについて ↓

災害後の心のケアハンドブック 静岡大学

https://www.shizuoka.ac.jp/th_earthquake/care_hndbk_R.pdf

⑦避難所となった場合の解放教室、教職員の役割の確認

 

災害発生

避難→管理職連絡→勤務校・居住地区の学校に出勤(安否確認・救命救護、保護者への引き渡し、待機児童生徒の待機場所・健康状況、物資確認(水食糧・毛布・薬品))

 

発生直後から1週間

①児童生徒施設被災状況の確認(怪我の有無、現在の所在、家屋の損壊の程度、健康観察、家族の状況、心身の健康管理(場合によっては家庭訪問))

②保健室の機能回復、避難所・救護室の職務・衛生管理、校内とトイレの破損状況確認、水質管理(学校医薬剤師と情報共有)、保健師等から避難所巡回に関する情報収集

避難所の衛生管理

 

災害発生1週間から1ヶ月後 

①心のケア周知、施設確認、個人情報管理、環境衛生、日常の水質、臨時の環境衛生検査、感染症予防に努める

②学校再開時に向けて学校医から意見をもらう 

 

6ヶ月まで

心身の健康観察を続ける

 

 

特に、事前の保健指導、要支援生徒の把握・対処、避難所・救護室の設営・水場の衛生管理は養護教諭が意識して行い、保健師看護師等と情報を共有し、棲み分けを意識せず、できる事をやる、という視点は重要と思います。

 

 

④保健室は震災救護センター

 

 

要約、どこかにデータは行ってしまいましたが、新潟中越地震経過、避難所となった保健室と内容、学校保健法→学校保健安全法への改訂についても書かれています。

阪神淡路大震災新潟中越地震を経て、学校保健・安全の充実を図るため、学校保健安全法に改正された(2009)「学校安全における設置者の責務、環境・安全計画・危険発生時対応マニュアル等の作成、地域連携等明記された。」

心のケアについても、学校防災における養護教諭の役割として、

学校防災の手引き(2012)より、対策本部の緊急医療、心のケアを担任養護教諭で組織的に支援するとある。

とあり、医療と心のケアは特に組織の中心として、しかし助け合いながら進めていくことを意識させます。

 

 

 

養護教諭が語る東日本大震災

 

 

養護教諭が語る東日本大震災―何を体験し、何を為し、何を果たしたか

養護教諭が語る東日本大震災―何を体験し、何を為し、何を果たしたか

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3月11日、各地域で、時系列で何が起き、何をしたのかが綴られています。多くの事例が挙げられており、地震発生から学校再開まで、印象に残った部分、あまり経験しないであろう避難所となった場合の事例を取り上げさせていただきたいと思います。

 

福島県釜石市地震発生、すぐに学校が避難所となったケース

 

3月11日から避難所となる。体育館は寒かったため、各教室で地域ごとに避難所とした

ろうそく・ストーブなどの暖房器具、毛布などの手配、物資の記録などを行う。(※毛布、ホッカイロなど、暖房器具の備蓄も必要)

翌日、役場、職員を避難所に派遣、避難所の設営協力。衛生状況、健康観察の実施。

3月19日 昭和大医療チーム(保健所・児相のコーディネーター)到着、名簿にチェックしておき、案内できるようにしておく。

3月22日電気が通る、水はまだ給水車から給水する。他の避難所ではノロウイルス、インフルエンザが流行したとの事でトイレ等水場の消毒、換気、体調不良者の隔離等行う。

4月20日学校再開に向け、避難所は体育館に移動、学校再開に向けて準備。養護教諭は5月7日まで毎朝避難所の健康観察を実施した。8月20日の避難所終了まで、高齢者の見回り等を行った。

※保健だよりには、「何か困っていますか」よりも「食欲はどうですか、夜は眠れていますか」と書くようにした。家もなくなって、身内も死んで、困っているに決まっているから。

4月20日は午前授業、5月10日から災害救助の方が用意したお弁当給食が始まった。

また会おうね さようなら 辛い喪失体験に、仲の良かった友人の転校、辛くならないように悲しい気持ちはそのまま受け止めた。子どもたちが将来の事を考える事ができるのには、衣食住の安定、安心感が土台にないと夢も持てない、そう実感したと語る。

 

〇同じく福島県釜石市、高台に避難し、避難先の避難所で職務に当たるケース

 

地震発生時、パニックにならないよう、すぐ校内の安否確認に走る、第一時避難所の校庭へ救急バッグを持っていく。津波警報発令、第2避難所の高台へ。この時、校舎の3階から防波堤に波が当たっているのが見えていた。

高台の避難所へ移動。災害直後の応急手当に当たる(骨折・脱臼部位の固定、要介護の介助、重傷者は日赤の救急車へ搬送、津波にのまれた人、海水をたくさん飲んで低体温で意識が無い人は、服やストーブ、ペットボトルにお湯を入れて温めた。

避難所のトイレは体育館ステージに横断幕を降ろし、男女で分け、衣装ケースを簡易トイレとした。避難所の保健指導、トイレ使用の注意(詰まりは流さず捨てる、水くみの当番決め、手指消毒用アルコールの設置)、感染の疑いがある人は隔離、避難所にいる人の薬の要望把握と確保、体温血圧計にて健康観察の実施→看護師や心理師に伝える。

養護教諭は主にパイプ役として避難者と医療者を繋げる役割を担う。避難所設営から現状を把握しており、医療福祉の知識もある。

心のケアについては、「前と変わらず、子どもに寄り添い続ける事」と仰られていた。ポロっとこぼした発言も聞いてあげる。前と変わらず、という点に養護教諭としての職務の大事さを痛感した。

学校再開の短学活、泣きにきた、と保健室に来室する生徒が何人もいた。悲しい気持ちを我慢せず、そうだねそうだねと皆で泣いた。

 

 

 

東日本大震災直後の保健室

 

kioku.library.pref.miyagi.jp

こちらから読めます。国会図書館でも読めます。

宮城県学校保健会より刊行された資料であり、震災直後の保健室、地域医療の場となった保健室の写真があり、被災後の様子が鮮明に分かる。

地震の揺れによる天井・外壁の破損、石巻気仙沼等沿岸部地域の津波の最高遡上40m、通常、遡上3mで家屋1階部分天井まで浸水、5mで2階建て建物が全て浸水という津波被害の実態が写真と数字で理解できる。

 

その中で、①宮城県実態調査(その2)震災を通して養護教諭が気付いたこと、感じたこと、というのが大変参考になる。

http://www2.iwate-ed.jp/yougo/miyagi16(144-153).pdf

要約

・必要だと思う災害用備蓄は、医薬品(外用、内用)、消毒液(手指用も含む)、体温計、血圧計、衛生材料、マスク、ゴム手袋、保温のための物(カイロ、レスキューシート、毛布)、タオル、ティッシュペーパー類、止血のための材料

・救急バッグ等は取り出しやすい場所や教室、職員室、保健室等複数設置、誰でも持っていけるよう周知する。

・特別支援の生徒へ認められている医療行為(服薬。吸引、吸入、経管栄養)の実践的知識を有しておく。

・避難所運営として、校舎の除染、清掃作業、寒さ対策(毛布等)、トイレの衛生面の配慮(プールの水を汲んで流す、トイレットペーパーは流さない)

・子どもと教職員の心身のケア

・保健室の救護所となった場合、全て資料等無くなった場合の保健室経営計画の策定

 

 

終わりに

 

最後までお付き合いいただきありがとうございました。私の要約では物足りないぜという方はぜひ各書お手に取ってください。

 

www3.nhk.or.jp

 

例えしっかり防災マニュアルを学校が作りこんでいたとしても、内容が間違っていたらゴミですし、生徒保護者教職員が共通理解をしていなかったらマジで作った意味もありません。

学校管理下では、まず子どもたちの安全を最優先させること、そのための指示が出せる教職員でいる事、子どもたちには自分が助かるような行動をとるよう常に指導しておくことが求められるでしょう。

しかし本校の防災担当は全くやる気がありません…とお悩みの方、さあ、各自治体の防災担当に相談をして、避難の場合の手順を確認、防災の日などに保健室から発信してみましょう。この地域の自治体の災害担当はこう仰ってますよ、というのを発信したことにすればいいんじゃないでしょうか。具体的な教職員向けのマニュアルは、生徒が無事自分の安全を守ってくれれば、まあいらないでしょう(動く人は動くし、動かない人は動かないので)。

 

完成度の低い仕上がりとなってしまいましたが、現状での結論はこれに至りたいと思います。